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音楽好きの読書と買い物メモ

フジファブリックを知るための順序(インターミッション)

フジファブリックを知るための順序(A面) - NAVER まとめ
上記のリンクの続きかな?
A面からB面に、レコード盤をひっくり返す前に、少しだけ手を止めて、フジファブリックについて考えてみたい。
ただし、ものすごく駆け足で...。


要は、3rdアルバム「TEENAGER」から聞けってことかい?


「お前の薦めてくる選曲は、ほとんど3rdアルバムの『TEENAGER』からじゃないか?要はそいつを最初に聞けってことかい?」という声が、耳元で聞こえてきたのだけれども、そうそう単純な話でもないのですね。
というわけで、この辺りのことをまずは整理しておきたくて、あれこれと書きだしておきます。
まずは、志村の生前に出された4枚のオリジナルアルバムについて、あれこれと。


1stアルバムの意義


フジファブリック (アルバム) - Wikipedia


このアルバムの特徴を一言で言ってしまえば、「レコード会社の要請で、和のテイストを強調するあまり、奇怪な部分ばかりが悪目立ちしてしまったアルバム」ということだろう(長い一言だね)。
フジファブリック初心者が、「よーし、フジファブリックというバンドを聞くぞ」と、力を込めて聞くには、なんともハードルが高い一枚だろう。まあ、そっち方面にハマれる人には、最高にして聞き飽きない名盤ではあるのですがね。このアルバムの特異性を顕著に表す1曲は、おそらくは、この「打ち上げ花火」でしょうなあ。



フジファブリック 「打ち上げ花火」 Live at Hibiya Yaon


捉え方によっては、プチ・プログレ風味のこの曲が、ファーストアルバムの折り返し点(5曲目)に収録されている辺りから、レコード会社がこのバンドの売り方に試行錯誤していたことが感じ取れるのです。スケール感のある良い曲なんですがね。


2ndアルバムによる再出発


FAB FOX - Wikipedia


1stアルバム「フジファブリック」が失敗作だったというつもりはないけれど、ある種、この2ndの方が、デビューアルバム的な要素が多いと思う。その理由は以下の通り。
・様々なタイプの曲が入っていて、何だかとっ散らかって見えるけれど、朧気に見えてきた方向性
・セルフプロデュースによってようやく一体化してきたバンドのカラー

それにしても、ジャケットもアルバム・タイトルもひどい(笑)。なんでこうなったんだろうなあというデザイン。

このアルバムでのいくつかの収穫は、インディーズ時代から大事に歌っていた「茜色の夕日」を最終曲として収録したこと、そして志村以外のバンドメンバーによる楽曲が収録されたこと。
他人が作った曲であっても、志村は自分のカラーで歌を歌える、実は素晴らしいシンガーだったということが、この辺りから追々とファンにも分かってくるのです。

このアルバムで開こうとした方向性を表すとすれば、やはりこの「マリアとアマゾネス」かな。



『マリアとアマゾネス』 live


マリアとアマゾネス(フジフジ富士Q)・吉井和哉
ついでにこちらも。
志村本人よりも、こちらの吉井和哉バージョンの方が、曲の本質(いやらしさ)がわかりやすいように思える。


バンドの代名詞になるはずが、遠くなってしまった3rdアルバム「TEENAGER」


TEENAGER - Wikipedia


3rdアルバムの「TEENAGER」。非常に良く出来ています。名曲ぞろいでカラーも揃っています。聴きやすさも彼らのアルバムの中できっと1番でしょう。
ただ、このアルバムを聞き終わった後に感じる奇妙な違和感。それはつまりこういうことです。「『若者のすべて』という曲を、補完することで成立させようとした1枚」ということでしょう。
随所に唐突に出てくる「正論」や、「青春な匂い」や、演じられた「良い人さ」が、あまりにも胡散臭いのです。
聞き手がフジファブリックに、志村正彦に感じている胡散臭さは、そっちじゃないんだよなあと思えてくる。その点がこのアルバムの特徴であり、唯一の瑕疵でしょう。

良い人を演じようとして、猛烈に胡散臭くなった曲としては、この「記念写真」辺りかな。


毒を吐き出すための私小説的な4th「CHRONICLE」


CHRONICLE (フジファブリックのアルバム) - Wikipedia


今となっては「まさか?」と思うのだけれど、もしかしたら3rdアルバムで提示された(楽曲上だけの)「良い人」振りを真に受けてしまったファンが多かったのかもしれない。ここに来て、バンドとして築き上げた一体感を一旦横に置いて、志村正彦という一個人が溜まりに溜まった毒を、ガス抜きのように吐き出したのがこの4thアルバム。
・全曲作詞作曲・志村正彦
・スタジオテイクでそこまで歪ませる必要はあるの?と思わせるほどに醜く歪んだギターの音。
・石つぶてのように暴力的に投げられる数々の言葉。
・アルバムからの唯一のシングルが、メロディの崩壊したような「Sugar!!」

文句を言ってるのかって?いやいや、素晴らしいのです。もはや志村正彦のソロアルバムと言ってもいいのではないでしょうか。そして、こうやって毒を存分に放った後で、改めてバンドに戻った時に、次のアルバムで何をどう表現するつもりだったのか?それが永遠の謎になってしまったことが、とにかく残念なのです。

アルバムを象徴する曲はやはりこの「Sugar!!」、そしてその対比として、アルバムには収録されなかった「ルーティーン」も合わせて。



フジファブリック ルーティー
4thアルバムには収録されなかったバラード曲。
上記の「Sugar!!」と、同じ時期に制作されたとは思えないほどの隔たり。そしてこの曲をアルバムに収録しなかった意図など、色々と考えさせられる。


5thアルバム「Music」


MUSIC (フジファブリックのアルバム) - Wikipedia


志村の急逝の後、残されたメンバーたちの手により、残されたテイクから作られた愛情に溢れたアルバム。
ただ、このアルバムを語る言葉を、僕らはまだ持ち合わせていない。


フジファブリック「MUSIC」SPECIAL SITE | LINER NOTES