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Queenをキチンと聴きたい人のためのアルバム解説<その2>

Queen II


このアルバムのポイント。
・ギターオーケストラと分厚いコーラスに本格的に取り組み始めたアルバム。
・アナログLPではA面にあたる前半部をWhite Sideとし、そこではブライアン・メイの作品が中心に配置されていた。またB面にあたる後半部はBlack Sideで、こちらはフレディ・マーキュリーの作品で固められている。
・2人の天才による才能のぶつけ合い。
・WhiteとBlackの対比の割に、全体的に暗く重たい作品。(Whiteの要素がほとんど無い)


ついでにマニアネタ。
年長のQueenファンから「君、好きなアルバムはどれ?」と聞かれた時に、このアルバム名を答えておくと無難です。
このアルバムを否定するとモグリ扱いされますからね。


Queen II



後に、"Bohemian Rhapsody"のPVでこの画像イメージが使用されたため、あの曲のイメージが強いですね。生まれて初めてあのPVを見た時に、「え?なんでこれ使う?」と物凄い違和感がありましたが、今となっては何とも思わないです。



アナログLPの内ジャケットはこんな画像でしたね。


<White Side>


1. "Procession" (Instrumental)


ブライアンによるギターオーケストレーションのインスト曲。この流れは4枚目の”God Save the Queen”で完成形となるけれど、もはやこの時点でも充分な完成ですよね。ブライアン・メイの天才っぷりを感じさせる一曲。


2. "Father to Son"


中期以降のライブでは演奏頻度が低いため、曲の評価としては埋もれがちな作品だが、実験的なギターオーケストレーションやコーラスの重ね方、また中盤での印象的なギターリフなど、聞き所満載の名曲。個人的に惜しいのは、どうしてフェイドアウトなんだろう?ブレイクなりなんなり入れて、ちょっと強引でも良いから、次の曲に繋いでたらもっと良かったのに。


3. "White Queen (As It Began)"


おどろおどろしい上に、やたらと重たく、そして壮大なイメージがあるけれど、意外にも良く聞くと、前半部のバックの伴奏はシンプル。インド旋律風のアコースティックギターによる中間部のソロなど、ファーストの"The Night Comes Down"に通じるものがありますが、こういうアコギの使い方って、この後、しばらく無いですね。


話のついでに。ファースト・アルバム制作はスタジオの空き時間を流用していたのは有名な話ですが、その時点では発売元のレコード会社も決まっていなかったため、アルバム制作は全体的にノンビリと進められたと言われています。その時期(1972年01月~夏の終わり頃)に集中して楽曲の制作をフレディとブライアンは行っていて、この"White Queen"、"Ogre Battle"、”What A Fool I've Been”(アルバム未収録曲)、”Seven Seas Of Rhye”等はその頃に作られて、ファーストには収録されなかった曲だそうです。


4. "Some Day One Day"


前曲のエンディングがシンプルで、そこからあっさりと繋がる流れは見事です。ブライアン・メイによるボーカル曲(ファースト・アルバムでは無かったので、ここで初めての披露でしょうか)。小品ではあるけれど、こういう曲がいつもアルバムに入ってくるところがQueenの特長ですね。


5. "The Loser in the End"


ロジャー・テイラーの曲。LP(含むカセット)時代、この曲になるといつも早送りで飛ばしてましたが、ゴメンゴメン、今聴くとかなり力の入った力作ですね。でも明らかにWhite Sideという面に入ってくるべき曲調でも無いし、この曲が入っている分だけ、この面の統率力は弱まってますね。良い曲なんだけど。


<Black Side>


1. "Ogre Battle"


曲が始まった瞬間の「持って行かれ」具合が半端ない名曲。フレディの曲が個性的で強烈なのはもちろんだけど、この曲でのブライアンのギターリフも物凄い。このアルバムのBlack Sideの評価は高いけれども、その評価の全てはフレディ一人のものではなく、ブライアンの見事なギターワークにある点も要注意。


2. "The Fairy Feller's Master-Stroke"


前曲の強靭な吸引力に引きずられるように、見事な繋ぎで2曲目に突入。ピアノというよりはチェンバロ風の音と変拍子気味のリズムが印象的な前半部。
このアルバムでは隙間という隙間をコーラスとギターの音で埋め尽くしているが、この手法はQueen本人たちにも実験的な試みで、計算ずくではなかった模様。アルバムのテスト盤をツアー先のオーストラリアで初めて聴いたメンバーが、視聴後に確かな手応えを掴んだという逸話は今となってみるとずい分と意外な話ではある。


3. "Nevermore"


冒頭の2曲の疾走感の後で、バラードナンバーでしっかりと落としてみせる手法は、ありがち言えばそれまでだけれど、楽曲の完成度の高さが強い説得力をもたらしている。この手法は後の"Lily of Valley"、"Love of my Life"へと引き継がれていく。その原型、原石にあたるのがこの曲。


4. "The March of the Black Queen"


セカンド・アルバムのハイライト曲。果たしてこの1曲の中に何曲分の曲のモチーフをぶち込んだのだろうかと思えるほど、様々な様相を見せてくれる壮大な曲。
それを贅沢と見るか、勿体ないと見るかは聴く人にもよるだろうけれど、結局このアルバム以降はここまでのぶち込みは無くなっていく("Bohemian"があるだろうって?、いやいやあの曲ははっきりと4つに分けることが出来るけれど、この曲のような手近な材料を全部放り込んだのとはかなり趣が違うと思います)。


5. "Funny How Love Is"


ここまでの流れが凄すぎて、この小品が流れてくると少しだけホッとする。実際に大きな展開も無く、ワンフレーズをいくつかのキーに転調させながら流暢に繋げたような手触りの曲だけれど、前曲までの困惑ぶりの後では、こういった曲が聴き手を休めさせるために必要と考えてここに入れたのではないかと、少し勘ぐった見方までしてしまう。人によっては「要らない曲」という意見もあるだろうが、個人的にはこの曲がここに無いと、アルバムの評価も随分と違っただろうなと思わされる1曲。


6. "Seven Seas of Rhye"


前アルバムの最終曲に予告編として収められていたあの曲がここで全容を表す。しかし改めて聴いても、やはりこの時期のフレディが何故この曲にそこまでの自信を持っていたのかが分かりかねる。アルバムからのシングル曲という扱いも何とも不可解(ただ、このアルバムからシングルで出せる曲があるか?と聞かれると、確かに見当たらないけれども)。エンディングの不可解な終わり方も含めて、個人的には聴くたびに疑問が渦巻く曲です。


オマケの話


ところで皆さん、2014年9月に発売されたライブ・アルバムの"Live at the Rainbow '74"を聴かれましたか?
熱心なファンにとっては「今更かよ?」「ブートでどんだけ見たことか」と言いたい気持ちは分かりますが、個人的には超がつくほどオススメです。特に2枚組のCD(Deluxe Version)の方です。
あの2枚組のライブ・アルバム。ぼんやりと聴いていると忘れがちなことですが、1枚目は74年の3月のライブ演奏で"Queen II"のアルバム発売後のツアー最終日の音源(実際には順延分の公演があの後あったのでラス前ですが、元々は最終公演地としてのレインボーでした)。そして2枚目は74年の11月のライブ演奏(実際には追加公演も含めた2日分の編集盤)で、これがなんとサード・アルバム"Sheer Heart Attack"の発売後のツアー音源です。8ヶ月ですよ!。たった8ヶ月でセカンドのツアーを終えて、サードアルバムを1枚仕上げて、そのツアーに出ているんですよ。恐ろしくないですか?しかもその間には、ブライアンは肝炎やら十二指腸潰瘍などで長期入院までしています。それでもアルバムが1枚仕上がって、さっそうとツアーに出てくる。現在の基準では考えられないほどの高密度な活動です(まあ有名な話、契約内容が過酷すぎて馬車ウマのように働かされ続けただけだという意見もありますがね)。

そういう意味で、あのライブアルバムを買ったけど何となく消化不良で聴きこめて無いなあという人にオススメの聴き方です。それはまず"Queen II"を聴いてからライブアルバムの1枚目、そしてちょっと休憩してから"Sheer Heart Attack"を聴いてからライブアルバムの2枚目を聴くという聴き方です。あの1枚目と2枚目の間の(長くて短い)時間間隔を身体に感じた状態でいずに、あの2枚を連続でボンヤリ聴いてしまうと、大事なあれこれを聞き逃してしまいます。オススメですので、騙されたと思って一度やってみて下さい。なーに、ほんの4時間を費やすことで、ぐっとQueenへの理解度が増えることは間違いないですから。

ついでにもう一つのマニア向けの話を。このライブアルバム、かなり真剣に聴いていても意外に気づきにくい点が一つあります。それはディスク2枚目、「Sheer Heart Attack」ツアーの最後におなじみのブライアンの多重録音による"God Save the Queen"が入ってますよね。これっておかしくないですか? あの国歌は次回作にあたる「A Night at the Opera(名盤・オペラ座の夜)」に入ってますよね。初めてこのことに気付いた時に、ちょっとした時空の歪みを感じてしまったのは僕だけでしょうか?「あれ?なんで?、それともこれは編集作業によるイタズラ?」とまで思いました。でもどうやらあれこれ調べてみると、「Sheer Heart Attack」ツアーの初日(1974年10月30日のマンチェスター公演)からしっかりと使われているのですよ。不思議ですね。どうしてそれを次作のアルバムに入れたのでしょうね?クイーンには本当に謎が多いです。


関連動画



Queen | Ogre Battle (Christmas Concert, Hammersmith Odeon 1975)
75年のハマースミスでのクリスマスショーから。
こんなきれいな映像が残っていたんだと驚きの映像。この時期の1年間は本当に中身の詰まった1年だったようで、フレディの動きも堂々としてキレが良いですね。そして各人の衣装がちょっとだけ豪華になっているような気がします。



Queen - White Queen (A Night At The Odeon - Hammersmith 1975)
結局出ましたね。オペラ座のアルバム発売後のオデオン公演。しかし、この公演、オペラ座からボヘミアンしか演奏していないという謎のセットリスト。直前のツアーで演奏していた、Sweet Ladyも、預言者の歌も、Lazy Sunday Afternoonも無しですね。色々と不思議な公演で、あれこれ謎がありますね。


Queenをキチンと聴きたい人のためのアルバム解説<その3> - NAVER まとめ


Queenをキチンと聴きたい人のためのアルバム解説<その4> - NAVER まとめ


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